~居住用財産の譲渡所得の特別控除~

 平成22年7月15日の東京高裁において、共有家屋の一部を取り壊してその敷地を譲渡した場合の、租税特別措置法35条1項に定める居住用財産の譲渡所得の特別控除(以下「特別控除」とします。)の適用の可否を争った事案について、納税者側が勝訴した内容について簡潔にご説明いたします。

事案の概要

 控訴人である納税者(以下「A」とする。)は、当該建物及び土地の所有権の4分の1を有しており、同居していた義姉等(以下「B」とする。)がその他の4分の3を有していた。Aは、自己の持分を他の者に譲渡しようと考え、本件建物の持分をBへ贈与し一部を取り壊した。本件建物の敷地を2筆に分筆し、取り壊された建物部分の敷地を譲渡した。取り壊された後の残存建物には、Bが居住している。

 このAの土地の譲渡について、特別控除の要件を満たすものとして更正の請求をしたところ、税務署長から更正すべき理由がない旨の通知処分を受け、その取り消しを求めた事案である。

 

納税者の主張

 この特別控除の取扱いの根本的な趣旨は、個人が自らの居住用財産を譲渡する場合には、これに代わる新たな居住用財産を取得するのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比べて特殊な事情であり、担税力も高くない場合が多いことなどを考慮して設けられたものである。この趣旨に沿って考えれば、今回の場合、Aは自己の所有する住居を失い、住居の再取得の必要性が生じる個人の保護という立場から、残存建物が物理的にみて居住可能でも、自己の所有する建物は存続しないため、適用があると考えられる。

 更に、共有持分の持分の全部譲渡であるのに、単独所有の一部譲渡の規範をあてはめた点は、法令の解釈適用を誤っている。

税務署の主張

 居住用建物の一部譲渡の場合には、残存建物が機能的にみて独立した居住用建物として認められない場合には、その譲渡によって居住用建物を失うこととなるから、特別控除の適用があるものと考えられるものである。例外的な優遇措置であることからすれば、租税負担公平の原則から不公平の拡大を防止するため、形式的基準を持って運用されるべきである。

 また、本件建物は区分して所有できる構造にはなく、取り壊された建物部分に関しても共有であったと解される。その後、残存建物の共有持分を贈与したと解さざるを得ない。

裁判所の判決

 今回の場合、本件建物はAとBの一部取り壊しに至るまで、居住の実情とその経緯、遺産分割の内容、さらに、実際に本件建物がBの居住部分を除いて取り壊され、Aが本件建物から転居するに至った経緯に照らすと、共有関係を解消する方法としてAが取得する建物部分を分割して取り壊し、土地を2筆に分割し、Aが取得する土地を更地にして売却したという事実にAとBが合意したと解される。

 当事者間の合意としては、建物の一部についてその所有権を移転することは可能というべきであり、登記上も反映させるには区分建物として実態を整える必要があるが、最終的に取り壊しが予定されていたため、便宜的にAの持分をBに贈与する登記としていると考えるのが相当である。

 よって、特別控除の適用があると解され、本件通知処分を取り消したうえで、Aの請求を容認することとする。

近年の傾向

 上記のような判例で、形式的に難しいと判断されていた税務上の取扱いが、近年こういった裁判に取扱いが改められる事が見受けられます。今回の場合は、年金保険の二重課税の取扱いのように、そもそもの解釈を改め、取扱いを変更したわけではなく、基本的な取扱いはそのままに、一部取扱いを明確にしたものと考えられます。

 個人の課税は特に、個々の多種多様な事案が多く、現行の法律ではすべての事案に柔軟に対応できるものではないと思われます。

 その為、申告する際に、疑問や違和感が感じた場合には、立ち止まって見直す(複数の専門家の意見を聞くなど)ことも必要なのではないでしょうか。

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